対談
小原院長の”いま一番気になる人・仕事”スペシャル対談
2016.05.12 藤原彰子×小原忠士
平成2 年の開院以来、25 年間にわたり地元連島を中心に多くの住民の方から信頼を頂き、皆様の健康に貢献してきた小原整骨院。その小原院長が“いま一番気になる人・仕事”というテーマで、ゲストの方と対談をして頂きました。今回は、社会保険労務士でありながら、支援学校で就労支援コーディネーターとして活躍している藤原彰子さんをゲストにお招きし、福祉の現場でのご経験や様々な課題について語り合って頂きました。
(2016 年5月12 日(木)珈琲館倉敷インター店にて)
「障がい者であっても、ちょっと社会になじめない人であっても、高齢者であっても倉敷に住み続けたいと思うような街にしたい。うちの子は倉敷で生まれて倉敷で育ったので、住み続けて欲しいです。なんだか政治家みたいですね(笑)。」
- 藤原彰子
- (藤原彰子社会保険労務士事務所 代表、就労支援コーディネーター)
1970年2月21日生まれ。倉敷商業高校を卒業。
学生時代はソフトテニス部でキャプテンをつとめるなど体育会系。
学卒後は、障害者施設である「ひまわりの会」に21年間勤務。
長男の康平君が知的障害を持って生まれたことがきっかけとなり、
40歳から社会保険労務士を目指し、資格を取得。
現在は福祉専門の社労士として活躍している。
- 藤原真由美
- (アームレスリングチームzero-腕所属アームレスラー)
1976 年4月生まれ。小五から母のすすめでバレーボールを始める。
さわやか杯第五回大会、最終選考会にて優秀選手賞を頂く。
倉敷商業高校卒業後、明石被服興業(株)に入社、
高校卒業後もグラブチームにてバレーボールを続ける。
現在、三男児(小6、小4、小3)の母。
趣味の裁縫ではハンドメイド作品の販売するなどの腕前を持つ。
日本折紙協会の折紙講師でもある。
3年前に、世界チャンピオン宮本真治氏に出会い、アームレスリングチーム、zero-腕に所属。
オールジャパンアームレスリング選手権大会にて-55 ㎏級2015ライトハンド 準優勝、
2016 レフトハンド準優勝、ライトハンド3 位の実績を持つアームレスラーとしても活躍中。
- 小原 忠士
- (小原整骨院 院長)
1964 年 倉敷市出身。地元である倉敷市連島で開院以来24年にわたり地域の皆様の健康に貢献してきた小原整骨院の院長。
柔道整復師としての技術力は当然、その穏やかな人柄で多くの患者に慕われ、スタッフからの信頼も厚い。2014 年6 月には株式会社エミリンクとして法人設立。
代表取締役となる。
- 俣野 浩志
- (株式会社パッション)
岡山市出身。一般社団法人ウェブ解析士協会認定 初級ウェブ解析士。経営修士(MBA:香川大学大学院地域マネジメント研究科)。大学でマーケティングを学んだ後11 年間印刷・デザイン業界に勤務。2009 年に岡山県産業振興財団主催のベンチャー・ビジネスプランコンテストにて奨励賞を受賞。2013 年大学院にて「住民主体の体験交流型プログラムが地域社会に与える影響についての考察」というテーマで、NPO のまちづくりを研究した。
とにかく一人で抱え込んでいてはネガティブな感情にとらわれてしまいますから。
最初、同じような境遇のお母さんが笑顔で過ごされているのを見てびっくりしたんです。
どうして楽しく暮らしていけるのかわからなくて…。
- 俣 野:
-
今回は、福祉の現場で数多くのご経験をされ就労支援コーディネーターとして発達障害の子ども達の就職支援をされながらも、ご自身も介護を必要とする子どもを持つ社労士の藤原彰子さんと、親として同じ経験を持つ藤原真由美さんを交え、実際の福祉の現状や課題について、語り合っていただきたいと思います。
まずは藤原さんとの出会いを教えてください。
- 小 原:
- 藤原彰子さんとは、鷲羽高校の高田先生からの紹介です。高田先生と彰子さんは高校の同級生だったんですよね。。
- 藤原(彰):
-
はい、高田さんは柔道部の主将、私はソフトテニスの主将をしていました。
2 人とも体育会系です。私が就労支援で鷲羽高校に関わることになり、職員室に行くと彼女がいてくれて…。
本当に助かりました。そして、整骨院の先生が就労支援活動について詳しく知りたいと高田さんから連絡があり、今回お会いすることができました。。
- 小 原:
-
藤原真由美さんは、アームレスリング全日本大会の直前に手首を痛め来院されてからのお付き合いです。
子どもさんが発達障害と診断され学校選びや就労に不安を持たれていたので、より詳しく内容を聞けると思い、今回声掛けさせていただきました。
- 藤原(真):
-
そうなんです。その節はお世話になりました。
声掛けていただきありがとうございます。お役に立てるようがんばります。
- 小 原:
- お二方とも、発達障害のお子さんを持たれており、様々なご苦労があったと思いますが、その辺りのことをお伺いしても良いですか。
- 藤原(彰):
-
私が就職したのは、障がい児や高齢者の方に、療育訓練や生活面の支援、就労支援を行っている社会福祉法人なんです。
そこで様々な障がいで介助が必要な方や、ご高齢で介護が必要な方の支援を行っていたんですが、結婚して子ども産んだら、生まれた子が発達障害だったんです。
今まで支援する立場にいたのですが、それから真反対の立場に立たされて…。
その時は何で?って思いましたが…事実を受け入れて前向きになれるまで結構時間が必要でした。
- 藤原(真):
-
私は3人子どもがいるのですが、長男が発達障害で…。
なかなか頼れるところがなくて、当初は途方にくれたのを覚えています。
同じ境遇のお母さんに出会ってからですね。
精神的に楽になれたのは…とにかく一人で抱え込んでいてはネガティブな感情にとらわれてしまいますから。
最初、同じような境遇のお母さんが笑顔で過ごされているのを見てびっくりしたんです。
どうして楽しく暮らしていけるのかわからなくて…。
- 藤原(彰):
-
そうですよね。一人で背負い切れるものではありませんよね。
うちは主人の方が早かったんですよ。
全てを受け入れて、悩むのではなく、将来のことを考えようと前向きになったのは…。
でも産んだ私の方は、なんだか自分が全て悪いんだみたいに思ってしまって…なかなかね。
結構時間が必要でした。
- 藤原(真):
- あぁ、わかります。どうしても自分が産んだということで責任をすごく感じて、自分が元凶だ、みたいな感じを抱いてしまうんですよね。
- 藤原(彰):
-
真由美さんは、子どもさんが生まれるまで福祉に関わることはなかったんでしょう。
最初はどこで何をして良いかわからず大変だったんじゃない?
- 藤原(真):
-
そうなんです。本当に不安で…今は「うさぎカフェ」などでお互いに支え合える仲間がいるので助かっています。
皆さん経験者の方ばかりで、共感してくれるし、市の援助とかの情報も共有できるし…。
- 藤原(彰):
- そうですよね、すてっぷ(うさぎカフェを運営する「NPO 法人ペアレント・サポートすてっぷ」)さんのうように私たちのような障がいのある子を持つ保護者に寄り添ってくれるところがあるのは本当に頼もしいです。どうしても孤立してしまいますからね。
- 小 原:
- そういった活動をしている団体は多いのですか。
- 藤原(彰):
-
まだまだ多いとは言えません。しかし、幸いなことに倉敷市は全国的に見ても福祉に対しての取り組みが進んでいる自治体なんです。
私たちのような障がい児を抱えた保護者は、子どもが成長していくのに必要な福祉サービスを、どうやって受ければいいのか、どんな手続きが必要で、どこでそれはできるのか、
そういうことが最初は全くわからないんですね。ただ漠然と市役所かなという感じなんです。でも、市役所へ相談に行くのは本当に勇気がいるのです。
- 小 原:
- それは、子どもがそうであることを認めたくないということもあって?
- 藤原(彰):
-
それもあります。様々な手続きやらが必要なのはわかるのですが、なかなか踏ん切りがつかないんです。
ですが、倉敷市の場合、健康福祉プラザ「ゆめぱる」という障がい福祉課の出張所のような機能を持ったところがあって、そういった心理的ハードルを下げるために、いつでも来てくださいと門を開いてくれています。
うさぎカフェのすてっぷさんと連携しているんです。
- 藤原(真):
-
そうなんです。
それこそ療育手帳をどこへ申請したら良いか、なぜそれが必要なのかも、初めての子どもで、わからないお母さんが多いんです。
- 小 原:
- なるほど、そういう情報は必要となって積極的に入手しようとしない限り、触れる機会がないですもんね。
- 藤原(真):
- はい。そういう子どもを持たない限り必要ない情報ですし…。
- 小 原:
- 確かにそうですね。お子さんが小さい時に、福祉サービスのレールというか入り口に入ると、そこから学校へ行くこととかはスムーズに行けるのですか。
- 藤原(彰):
-
はい、障がい児ということに関しては連携も取れてきて、結構充実しています。
ただ、障がい者、障がいを持たれた成人の方に関しては、まだまだ連携ができていないです。そこに関しては今後、地域で支える仕組みが必要だと思います。
そうなると行政の福祉サービスだけではできないので、地域で、企業も病院も近所のおじちゃん、おばちゃんもみんなで支え合うという仕組みが必要です。
- 藤原(真):
- そうですよね。まだ私の子は小学校なので…今後のことをどうしていけば良いかというのは、不安もあり…将来のビジョンが見えないので…。
- 小 原:
-
そういうところを就労支援コーディネーターとして、彰子さんが担っているのですね。
その仕事は具体的はどんなことをしているのですか?
長い目で見ると、企業のメリットは助成金以外の方が大きんです。障がい者の子たちは真面目にコツコツと働きます。その働く姿はとても一所懸命で純粋で…一般の社員はその姿を見て頑張ろうと思えるんです。
- 藤原(彰):
-
そもそものキッカケは、今までは特別支援学校でしか行われていなかった障がい児の就労支援を、一般校で学ぶ発達障害の障がい児達に対しても行えるよう、そのノウハウを活用しようという国のモデル事業だったんです。
その担当になったことがキッカケなんです。
岡山県立倉敷鷲羽高等学校で行われたプロジェクトなんですが。県内初のケースで、この結果で岡山県の教育委員会が必要性を感じて、国から引き継いで岡山県が独自でこの4月から取り組むことになった全国的にも珍しい取り組みなんです。
- 小 原:
- では、当初は短期のプロジェクトだったんですね。担当になった経緯とかは?
- 藤原(彰):
-
はい、実はこの仕事は社労士の資格が必要とかは全く関係ないんです。
私に声がかかったのは、たまたま福祉の世界が長かったのと、ハローワークとのつながりがあったからなんです。
社労士として独立をした時に、勤めていた社福の先輩から顧問をして欲しいと言われて…本当にありがたいことに…。
そこから口コミで仕事が広がっていったんですが、口コミなんで福祉サービスの施設ばかりをすることになって(笑)。
社労士の中では福祉サービスの施設ばかりする人は少ないんですよ。
それが差別化になって良かったんです。
そんな中、ハローワークから声がかかって琴浦支援高等学校の就労支援をすることになったんです。
この仕事(琴浦支援学校の)は今までは職場開拓ができる人ということでハローワークのOB の人が多いんですが。
しかし、ハローワークのOB は職場開拓のプロであっても、福祉の経験がない。
障がい児…彼らの就職を支援するには、福祉の経験があるとないとでは全く違います。
琴浦では、一人ひとり、その子にあった企業を探してくるのがメインの仕事。
企業開拓はハローワークで検索をかけて求人票から見つけてくるんです。
それから電話する…本当に営業と一緒。
真由美さんも、支援学校か一般校か将来を考えてどうしようかと悩まれたと思うんですが、療育手帳を取っていれば、支援学校が受けれます。
今はどちらでも選べます。
小学校で知的クラスに入っても、中学は一般に行くことができる。
しかし、療育手帳があった方…支援学校の方が、就職しやすいんです。
支援学校の就職についてはすでに道筋ができているんで、知的障がいの子の就職は安定していんです。
ただ最低賃金で雑用的な仕事になってしまいますが。
逆に一般高の子は、一般企業しか就職の道がないんです。
しかし企業側の受け入れ態勢が整っているとは言い難いし、障がい者雇用をやっている企業も増えていないんです。
また一般高校の先生方はそういった子供が少ないこともあり、ノウハウが蓄積できていないんです、転勤もありますし。
- 小 原:
- なるほど、支援学校か一般高校のボーダーライン上の子どもに関して言えば、制度がまだ整っていない…、新しい道を開拓している感じですね。
- 藤原(彰):
- はい、先ほども言いましたように、一般高校の鷲羽高校で就労支援を行うのは岡山県では初めてで…モデル事業だったこともあり法律的に全く整備されていない中での活動になるんです。
- 小 原:
- この仕事に社労士の資格は必要ないとおっしゃられていましたが、資格が役に立つことがありそうですね。
- 藤原(彰):
-
そうなんです。障害者雇用促進法では、常時労働者を抱えている事業主に対して障がい者の雇用義務が課せられています。
例えば、一般事業主には2.0%なので、50 人以上の労働者を抱えている場合は1人の雇用をしなければなりません。
これには報告の義務もあります。これは社労士として言えます。
逆に、障がい者を雇用する企業に対しては、雇う時や、設備を変えないといけない場合に様々な助成金があるんです。
雇うだけでも2年間は助成金が受けれます。場合によっては年間何百万円にもなりますから大きいですよね。
それだけ国は障がい者の雇用に一生懸命になっているんです。
ただ、国や地方自治体が一生懸命になって、制度を作り改善していても、企業側がほとんどと言っていいほど、そういった情報を知らないんです。
初めて障がい者雇用を行う場合、企業側も不安なんです。
誰(どういった団体)が、どこまでサポートしてくれるか…。
- 小 原:
-
確かに、不安でしょう。その子たちの人生に関わることになりますから。
企業側の受け入れ態勢も必要でしょうし…。
- 藤原(彰):
-
企業へアプローチする時に、仕事の切り出しが必要なことを理解してもらいます。
例えば、彼らができる仕事を集めて、一つの部署を作るとか。
複数の作業で一つの仕事になっている中の一部分だけをやってもらうようにするなど…。
そういったことが整ってくると、企業側も安心して障がい者の方を受け入れることができるんです。
企業側が心細くならないように…それが障がい者の方が安心して働き続けることにもつながります。
私が一番気を使っているのが、どんな作業をしてもらえるかをマッチングさせる部分なんです。
これが今からの企業開拓の重要な部分になると思っています。
- 小 原:
-
企業側も障がい者の方を受け入れることによるメリットはあるんでしょう。
法律がとか助成金があるとかだけではなくて…。
- 藤原(彰):
-
もちろんです。そこは声を大にして言いたいところなんです!
長い目で見ると、企業のメリットは助成金以外の方が大きんです。
障がいのある子たちは真面目にコツコツと働きます。
その働く姿はとても一所懸命で純粋で…一般の社員はその姿を見て頑張ろうと思えるんです。
社員の方々が一所懸命働くこの子たちに「ありがとう」と声をかけるようになるんですが、そう言われると彼らはとても喜びます。
もっともっと頑張るようになるんです。
もともとがコツコツ真面目に作業をこなすので、企業側もこの子たちへの信頼度がさらに増します。とても良い循環ができるんです。
この子たちはとても素晴らしい才能を持っているんですよ。
例えば、品質管理、検品作業の仕事をさせたらすごい力を発揮する子もいるんです。
彼らは決められた規格に合わない部品や製品をとても正確にハネていきます。
私たちだと、このくらいは許容範囲だろうという感覚的な、曖昧な判断をしてしまうことがありますが、彼らにはそれはないんです。
合っているものは合っている、違っているものは違っているんです。その正確さと集中力は私たちにはなかなか真似出来ませんよ。
- 藤原(真):
-
そうです!ほんと良くわかります!
彼らは何かにこだわり…執着したりして同じ行動を繰り返したり、私たちにはわからないマイルールを作ってそれに基づいて行動したりしますが、それは一見弱みに見えますが強みでもあるんです!
弱みと強みは表裏一体ですから。
捉え方、見方次第ですよね!
- 小 原:
- 企業には、短期で結果を判断するんじゃなく、じっくりと取り組んでほしいですね。
- 藤原(彰):
-
はい、助成金が終わっても雇用し続けてもらうようにしたいんです。
企業が雇って良かったと思うようなことを助成金が払われている期間内に作らなければ…それが長期で雇うことになるかどうかのポイントですね。
今回、このプロジェクトから新しいチャレンジが始まったんですけど、今後、この制度の定着や普及が上手くいくんじゃないかと、とても手応えを感じていることがあるんです。
一つは、人を大切にしている企業って本当に真面目に話を聞いてくれるし、学校にも来てくれるんです。障がい者雇用について知らない企業はなかなかお会いしてくれないんですが、それでもお会いしてお話すると力になりたいとおっしゃってくれる企業もあります。
そういう企業は従業員を大切にしています。
やはり人が一番の資本だとわかってらっしゃるんだと思います。ほんとに積極的になってくれます。
もう一つは、ある生徒の頑張りと学校側の取り組む姿勢が素晴らしかったことなんです。
一般高校に通う子どもは、平日に実習ができないんです、普通の授業があるので…支援学校のような実習ができない。
なので短期間で経験を積んで決めなければならないんです。
支援を必要とする子は経験がないとできないんです。
その子には発達障害があり、いじめられて、人嫌いになって、友達がいない学生生活を送ってきたんです…なので無愛想で、第一印象がとても悪い。
この子は10 社の企業を開拓して実習もしてきた。それでやっと3月31 日に就職先が決まったんです。
ご両親も不安があったと思うが、任せてくれ、信じてくれました。私と学校の取り組みを。
それには大きな責任も感じましたが、信じてくれたことが嬉しかった。
それに学校がその子のいいところを言い続けてくれたんです。
ほとんどの学校は、できないところを言われることが多いんですが、ここ高校の先生、彼の長所や出来ることを言いつづけて教えてくれたんです。
おかげでこちらも求人開拓ができた…私も心強かった。
それに本人がとても頑張った。休みの日も実習に行きましたしね。ほんと10 社目の時は、私もキツかった。
でも最後は本人の「働きたい」という言葉を聞いて、ある企業が採用を決定してくれた。
この子は1年かけて就労支援をしたんですが、1年間ずっと倉敷就労支援センターが影で支えてくれていたんです。
卒業間近になると本人にも直接関ってくれたので、学校から社会に出てからの移行がスムーズにいった。
顔つなぎができていたから。1年前からの関わりなので…これが本当の移行支援だと思います。
- 小 原:
-
素晴らしいですね!他人の長所に目を向けるということは、一般企業の人材育成でもよく言われることですが…人事考課制度も最近では加点主義評価を導入している企業も多いかな。
人は褒められると嬉しいですから…やる気も出るし、伸びます。
ところで、移行支援ということを言われましたが、子どもが社会へ出てからの支援というのはきちんと確立されているのでしょうか。
収入面もそうですが、一人暮らしとか、その子を見守る仕組みとか…。
- 藤原(彰):
-
はい、そこはこれからの課題です。
実は、障がい児は結構支援が充実しているのですが、障がいをもたれた成人の方に対する支援体制はまだまだこれからというのが正直なところです。
今回のように、卒業・就職の段階で倉敷就労支援センターのような行政機関へスムースに移行できたケースはまだまだ少ないんです。
成人の障がい者の場合は、地域みんなで支える仕組みが必要です。
そうなると福祉サービスだけではどうにもならないので、地域…企業も病院も近所のおじちゃん、おばちゃんもみんなで支え合う仕組みを作らなければなりません。
- 藤原(真):
-
私もそう思います。
学童保育で障がい児を預かってくれるところもまだまだ少ないですし…。
どうしても親が先に逝くのは避けられないですしね。
- 藤原(彰):
-
ですね。この子たちが生涯寄り添ってくれるところはまだまだ少ない。
グループホームとかね。
グループホームを立てるにも地域の反対があったりするから…まだ。
もっと地域の方々の理解が必要なんです。
親だけでは無理…。地域同士で認め合うとかがもっと必要でしょう、まずは町内会から。
まだ昔の人は固定観念を持っている方も多い。
隠そうとしたりする…残念だけれど。地域より学校の方があったかい。
- 藤原(真):
-
その子には、その子にしか出来ない役割を持って生まれてきたと思うんです。
だから、親は自分の子供を普通に叱ったり、感情を出せば良いと思う。
ちゃんと一人の人としてみてあげないといけない。
- 藤原(彰):
-
そう私のことを言うとね。私の子は常に介助を必要としている子なんです。
だからと言って彼が何も出来ない、何もしていないということではないんです。
彼にとっては生きていること自体が働いていることなんです。
彼はとっても良い笑顔をするんです。
私が働いている時にはヘルパーさんに来てもらっているんですけど、彼の笑顔をみると本当に元気になれると言ってくれるんです。
純真で屈託のない笑顔だからでしょう。
いろんな苦労がありましたが、それを苦労とは感じなくなれるんです。
彼がいるから家族の絆が強くなるし、自分がやりたい仕事ができている。
自分の使命が明確になったのも彼のおかげです。
私は、小学校の時から福祉をしたいと思っていたんです。
近所のお兄ちゃんが知的障害だったんですが、自分の父はその子とよくキャッチボールをしていたんです。
でも近所の人の中には偏見があって、変な目で見る人がいて…違和感があった。
それが福祉に行きたいと思ったきっかけかもしれません。
- 小 原:
-
地域社会の役割とは…様々な人ともっと真剣に対話をする必要がありそうです。
誰にでも起こりうることですから。
それこそ自分にも介護が必要となる日は必ず来ます。
最後に伝えたいことや今後の夢をお聞かせください。
- 藤原(彰):
-
そうですね、すぐできそうなこと、いまやろうとしていることで言えば、ネットワークづくり。
玉野市の子(今3年生)の就労支援、職場開拓。
卒業した後のサポート体制が全くわからないので、その道筋を作りたい。チーム玉野。
福祉、教育、企業の連携が取れるチームが必要なんです。これを作っていかないといけない。
自分がアクションを起こさないと。
夢ですか…ちょっと大きなことになりますが…誰もが助けてくれる、暖かい社会にしたいです。
生活困窮事業(引きこもりとか)もあって、職場開拓の時に一緒に紹介しているんですが、障がいも引きこもりもセットでやりたい。
障がい者であっても、ちょっと社会になじめない人であっても、高齢者であっても倉敷に住み続けたいと思うような街にしたい。
うちの子は倉敷で生まれて倉敷で育ったので、住み続けて欲しいです。なんだか政治家みたいですね(笑)。
伝えたいのは、特性のある人(障がいのある方)も。地域で生活し続けたいと思っているので、地域の人には暖かく見守ってほしい。
手を差し伸べてくれなくても良いので、見守ってくれるだけでも良いので、それだけでも元気に生きていけるので。
- 藤原(真):
-
見守ってくれるだけで嬉しいです。私たち親も、孤立することもなくなります。
地域の人の存在って、やはり大きんですよ。普段でも…いざという時も…。
- 小 原:
-
なるほど…遠くの親戚より近くの他人という諺もありますね。
彰子さん真由美さん、今日はお忙しいところ、ありがとうございました。
普段の生活で福祉についてはあまり聞くことがなく…勉強しなければと思いました。
また彰子さんにはFM くらしき「気まぐれ!メンズトーク」にもご出演頂きますので、また色々と教えてください。
- 藤原(彰):
-
こちらこそ、ありがとうございました。
是非、障がい児の子ども達のこと、ちょとでいいので気にかけてください。
- 藤原(真):
- ほんと今回は同席の機会を頂き、ありがとうございました。
■藤原彰子社会保険労務士事務所
〒710-0016 倉敷市尾原2049-1 TEL:090-7136-5810
E-mail:fujiwara4391@hi.enjoy.ne.jp