対談
小原院長の”いま一番気になる人・仕事”スペシャル対談
2016.10.30 三村和愛×小原忠士
平成2 年の開院以来、25 年間にわたり地元連島を中心に多くの住民の方から信頼を頂き、皆様の健康に貢献してきた小原整骨院。その小原院長が“いま一番気になる人・仕事”というテーマで、ゲストの方と対談をして頂きました。今回は、障がい者の方々が働くビュッフェ&ベーカリー『CHALLENGED』で指導員として働くたかわら、社会人バンドのボーカルという顔を持つ三村和愛さんをお迎えし、社会性の高い仕事とご自身のバンド活動の両立について語り合って頂きました。(2016 年10 月30 日(日)CHALLENGED にて)
「彼らの能力をきちんと引き出してあげて、ちゃんとした事業に展開しているんです。なので障がい者が働くレストランだからと言って…10 月末にオープンしたんですが、おかげさまで、本当にいい感じで運営ができています。」
- 三村 和愛
- (社会福祉法人 倉敷夢工房「CHALLENGED」指導員)
970年4月2日生まれ。倉敷市生まれ。
社会福祉法人倉敷夢工房が運営する障害者施設「CHALLENGED」の指導員として、障がい者とともに働きながら、働くことの楽しさや大切さを伝え、地域社会に貢献している。また社会人バンドのボーカルとして活躍している。
- 小原 忠士
- (小原整骨院 院長)
1964 年 倉敷市出身。地元である倉敷市連島で開院以来24年にわたり地域の皆様の健康に貢献してきた小原整骨院の院長。
柔道整復師としての技術力は当然、その穏やかな人柄で多くの患者に慕われ、スタッフからの信頼も厚い。2014 年6 月には株式会社エミリンクとして法人設立。
代表取締役となる。
- 俣野 浩志
- (株式会社パッション)
岡山市出身。一般社団法人ウェブ解析士協会認定 初級ウェブ解析士。経営修士(MBA:香川大学大学院地域マネジメント研究科)。大学でマーケティングを学んだ後11 年間印刷・デザイン業界に勤務。2009 年に岡山県産業振興財団主催のベンチャー・ビジネスプランコンテストにて奨励賞を受賞。2013 年大学院にて「住民主体の体験交流型プログラムが地域社会に与える影響についての考察」というテーマで、NPO のまちづくりを研究した。
「人手が足らないってことで帰って来たんです。当初はパンの手伝いをするはずだったんですが、利用者さん、施設で働いている障がい者の方々が増えてきたので、作業内容を増やす必要がでてきて…」
- 俣 野:
-
今回は、障がい者の方々が働くビュッフェ&ベーカリー『CHALLENGED』で指導員として働くたかわら、社会人バンドのボーカルという顔を持つ三村和愛さんをお迎えし、社会性の高い仕事とご自身のバンド活動の両立について語り合って頂きたいと思います。
まずは三村さんとの出会いをお伺いしたいと思います。
- 小 原:
-
三村さんとの出会いは、2015 年8 月に開催された「おやじバンドフェスティバル」で三村さんのステージを見たのがキッカケでしたね。
岡山ルネスホールで行われたライブだったんですが、三村さんの声量と声の美しさに魅了されて…。
その後の打ち上げをご一緒させていただいたんですが、その時にCHALLENGED の切り盛りをされていることを知ったんです。それからのお付き合いですね。
- 三 村:
- そうでしたね。あのライブの後も何度か観に来てくださって…、CHALLENGEDにも食事に来て頂いたり…ありがとうございます!
- 小 原:
- いえいえ、CHALLENGED はランチビュッフェも美味しいですし、建物の雰囲気が和風モダンっていうのかな?…とっても素敵で、場所も隠れ家的でいいですよね。
- 三 村:
-
ありがとうございます!よく閑静な場所で良いと言ってくださる方が多いんですけど、周りは田んぼばっかりのただの田舎です(笑)。
でも駐車場も広いですし、それに静かで気持ちの良いところなのは確かです!
- 小 原:
-
ですね!ホッとします。まずは、CHALLENGED についてお伺いしたいと思います。
そもそもここの施設はどういう経緯でできたんですか?
- 三 村:
-
ここは、社会福祉法人である倉敷夢工房が運営しています。
倉敷夢工房は、平成6年4月に理事長である私の母が、障がい者の働く場所を作りたいという想いで自宅の一角にプレハブを建てて、弱視や盲目に近い方々と一緒に箸を袋に入れたりする作業所を始めたのがキッカケなんです。
岡山市から杖をついて働きに来られる方もいました。
でも事業として回していくにはあまりにも利益が少なく…そこでパンを焼いて販売する事業を始めたんです。
当初は、心ない言葉を相当浴びたようです。
「障が者が作ったパンを誰が買うなら!」って言われたこともあって。ひどいですよね。
私の母がすごいなと思うのは、そこで全くくじけず、逆に、その作業所を倉敷夢工房として大きくしちゃったんです。
そして手作りパンの販売を始めたんです。
- 小 原:
- お母さん、すごいですね!そういうかたが社会を変えていくのでしょうね。
- 三 村:
-
ええ、まぁすごい母です(笑)。その後、平成14 年に法人化して、さらに人も増やして、船倉で「ももっち焼き」や「おはぎ」を販売するようになって…今では、総社の休耕田で大豆を作って、豆腐を作ったり、おからを使ったクッキーとかも作っています。
実は私がここに関わるようになったのは、最近なんです。それまでは関東に住んでいて、普通に働いていたんです。倉敷に帰って来たのは平成21 年の7 月なんですよ。
- 小 原:
- そうなんですか。
- 三 村:
-
母が怪我して…人手が足らないってことで帰って来たんです。
当初はパンの手伝いをするはずだったんですが、利用者さん、施設で働いている障がい者の方々が増えてきたので、作業内容を増やす必要がでてきて…弁当の事業をするようになったんです。
ちょっと専門的な話をしますと…社会福祉法人は社会福祉法で規定されている社会福祉事業(第1種社会福祉事業)が行える運営主体なんです、社会福祉事業は国と地方公共団体と社会福祉法人しか行えないんです。
例外として、日本赤十字社のように国や地方公共団体が認めた場合は行えるんですが…。なので私たちは法人としては社会福祉法に基づいて活動しています。
さらにここで行なっている事業は、いわゆる援助付き雇用というものですが、これは厚労省が定める障害者総合支援法で定義されていて、「継続型就労支援作業所」と呼ばれています。
継続型就労支援作業所は、最低賃金を満たす雇用契約を結ぶ「就労継続支援A 型(雇用型)」と、雇用契約の必要がない「就労継続支援B 型(非雇用型)」があります。
私たちが運営しているCHALLENGED はB 型で、利用者さんは通所して授産的な活動を行いながら利用していただく施設です。
最近は発達障害の子どもについてメディアでも取り上げられることが増えてきましたが、発達障害は一見してもわかりづらく、「自分勝手」「わがまま」と捉えられることも多く、他人からはなかなか理解してもらえません。
脳の機能障害によるものだということがわかってきて、躾や教育が原因ではないんですけど、まだまだ世間での認知が低くて、本人の努力不足とか育て方が悪いとかって思われるケースが多いんです…自閉症やアスペルガー症候群、注意欠損・多動障害や学習障害が主な症状です。
大切なのは、発達障害の症状・特性を周囲の大人が理解して、早い段階から療育を行ない彼らの自己肯定感を高めながら、成長を見守ることなんです。
例えば、CHALLENGED は、彼らが貢献できていると感じられる「場」なんですね。必要とされているんだということを実感できる。ご家庭だけでなく、周りからの支援を受けるなどで、そういう機会を多く作られた方が、彼らにとっても、ご両親にとっても良いと思います。
国も発達障害支援法を作って彼らの支援を後押ししてくれていますし…福祉関連の施設のほとんどは、国の助成金を活用して運営されていますから。
もちろん、私たちのB 型の施設も助成金は受けています。
一人につき一月通ったらいくらとか、食事や送迎とかを加算して申請するんですけれど。
A 型のように労働契約を結ばないので最低賃金というわけではないのですが、B 型の中では県内で一番お給料は高いです。私たちの施設の利用者さんの親御さんは、ここで働くと自発的にやれるこことが増えてくるのでお世話になりたいという方が多いんです。
私たちは、彼らの能力をきちんと引き出してあげられるように指導しています。なので障がい者が働くレストランだからと言って、値段が安いわけでもなく普通の価格設定です。
平成25 年の8 月に建物ができて、10月末にオープンして3 年経ちました。
口コミでお客様が増えて、おかげさまで、本当にいい感じで運営ができています。
- 小 原:
-
それは素晴らしいですね。真面目に正しいことをコツコツ行うというのが本当に大切だと思いますね。
ところで、お弁当の事業もされているんですね。
- 三 村:
-
はい、話しかけてそれてしまいましたね(笑)。
私はこのCHALLENGED と宅配のお弁当を担当しているんです。
日によりけりなんですが、60 個〜70 個とか注文をいただいています。
2週間に一回メニューは組み立てていて、おかずは400 円。ご飯は150gをつけて440 円くらい。イベントなどで300 食の注文が入ることもあります。
ホームページを見て問い合わせをしてこられる方もいらっしゃいますが、主なお客さんは市役所ですね。馴染みにしてもらっている課からの注文がほとんどです。
2 週間に一回注文票を配布して回っています。
- 小 原:
- 市役所の方が利用されてるんですね、それはなんだか嬉しいですね。
- 三 村:
-
ええ、応援してくれてるんだなと思います。ちょっとした気持ちなんでしょうけど、本当に人の心の温かさを感じます。まぁ実はお弁当も大変なんですけどね。
弁当は増やしたいんですが、全部手作りなので…なかなか手が回らなくて。金曜日までに1週間分の注文をくださいと書いているので、当日の朝でないと、お昼が必要かどうかわからない人は注文しにくいんですね。
そこが伸ばせない原因なんですけど。それに対応しようとすると冷凍食品を使わないといけなくなる。それはあまりしたくないんです。注文自体は1個からでもできるんですよ。
- 小 原:
- お弁当とレストランだとどちらの方が売り上げは大きいの?
- 三 村:
-
比率としてはレストランのウエイトが大きいですね。あと、パンの売り上げが大きいです。
火曜日を除く月〜金で、注文をいただいた企業さんに配達したり、それぞれの曜日でいろんな場所で販売しています。建物の中で販売させてもらっているのは、プラザ、記念病院、備中県民局。利用者さん販売に歩いているのは、一番街、美観地区、商店街です。平日はまだ暇な時があるんですが、土曜日か日曜日は結構お客さんがお見えになられますね。
まだ、どっちかが忙しくてどっちかが暇とかが多いかな。
平日がまばらな日と、えっ!?と思うくらいお客さんが来る日あって、落差が激しいんです(苦笑)。
昨日暇だったのに!って昨日きてくれたら…って。もちろん、お客さんが来てくれるのは本当に嬉しいんです!
- 小 原:
- CHALLENGED はちょっと奥に入ったところにあるんで、看板とか旗とか立てて目立つようにしたらいいのに。
- 三 村:
-
そうですよね。でも旗を立てたりとかは親がやりたがらないんです。入り口とかわかりにくいのにってよくお客さんから言われるんですけど…親はそれでいいと言っているんです。
まぁそれも良いのかもと私も思うようになりました。隠れ家的な雰囲気でね。
- 小 原:
- そうだった。僕もそう言ってましたね(笑)。ところで、三村さんのもう一つの顔であるバンド活動の話しをお伺いしたいと思うんですが…先日、こちらで馬頭琴のコンサートをしていなかったですか?
- 三 村:
- はい、ここを使わせてほしいというお話があって、場所貸しもしているんです…こういうコンサート、ランチコンサートが定期的にできたら良いと思うんです。
- 小 原:
- それ良いですね。
- 三 村:
-
ええ。今は、ランチコンサートくらいならできますね。まだ夜は難しいかなと思うんです。
音が漏れるし。夜やると私たちがやらないといけないので、飲食もとなると大変かなと思います。
黄昏コンサートくらいならできるかな。ここもお酒は置いてあるんですよ。ビールもワインも。
でもお昼がメインなので注文する人は少ないんですけどね。
- 小 原:
- 黄昏コンサートっていうのも雰囲気があって良いかも!自分たちのバンドのコンサートは?
- 三 村:
-
今年の1月に自分のコンサートはしたんです。定期的にしたいんですけど、メンバーの6 人が揃うのが難しいんです。
夜なら揃うんですけれど…。ドラマーはイチゴ農家で12 月はクリスマスシーズンで一番忙しいし。
本当に集まりにくい(苦笑)。それで、来年6 月にライブしようかなと思っていて、調整中です。
- 小 原:
- どんなジャンルの曲が多いんですか?
- 三 村:
-
う〜ん、ジャズからブルースというところかな。結構みんなが知っていてカコイイ曲を選曲することが多いんです。
バンド名は「スパンキーダイヤモンズ」という名前なんです。スパンキー=勇気っていう意味で。実は響きで決めたんですけど(笑)。今は持ち曲を練習しているところです。
実は、作詞作曲もしてたことがあるんですけど、みんなが乗ってこなかった…(悲)。
それ以来オリジナルはもういいかな、と思っているんです。
イマイチかっこよくなくて…。それ以降はメジャーな曲をカバーすることになったんです。
でも作りたい曲はあるんです、構想はあるんですよ。高熱を出してウンウン唸っている時に浮かんだ曲なんですけど。
岡山弁で歌うとか。笑えるような歌がいいかな。メンバーにはまだ言っていませんが…今度はタイミングを計って、絶対うんって言わせたる!(笑)
- 小 原:
- ははは。期待しています!僕も周りに広めておくので、是非聴かせてください!
- 三 村:
- うっ!…名曲は未発表曲のまま終わるって…カッコよくないですか?
- 小 原:
- いや、もうオリジナル曲の構想があるって聴いちゃったんで。絶対発表してくださいね!
- 三 村:
- が…頑張ります。
- 小 原:
- バンド活動は今後どういうふうにされていくのですか?
- 三 村:
-
東京にいる時からずっとやってきて、やっぱり好きなことなので、バンド活動は長くやっていきたいです。
CHALLENGED は仕事としてメインでやりながら。この場所だと、ハープとかの楽器でもマイク通さずできるので、声楽とコラボして…という話もあるんです。福祉施設だからといって、特別な施設じゃなくて、もっと普通にライブとかもする場所にしたいんです。
- 小 原:
- そうですね。そういう施設であっても何にも気にせず普通にふらっと寄れるっていうところがいっぱいあるのが、本当に誰に対しても優しい街なんだろうね。そいう街にしたいね。
- 三 村:
-
そう思います!地域っていろんな人が集まって生活しているじゃないですか。
だから、この場所を、誰しもが集えて交流ができる場にしたいんです。私のライブ活動がそのキッカケになると嬉しいですし…。
ここで働いている利用者さん達、彼らを障がい者っていう言葉だけでくくって欲しくないんです。
もちろん、ちょっとコミュニケーションが苦手だったり、一度に複数のことをするには時間が必要だったりしますけど…社会を構成するのは一部の人たちだけじゃないんですから、もっと私たち大人が、彼らのことも含めて、高齢者支援のこと、貧困のこと、育児のこと、もっともっと学ばないとって思うんです。
偏見を持つのは私たちの方で、彼らは全く歪んだ感情なんて持っていないんです。純粋ですよ。
ありがとう!って伝えた時の嬉しい表情を見ていると、人って他の人に役に立つことをする時って、一番自分自身を誇れるようになるんだなって思います。
- 小 原:
-
さっきコーヒーを持ってきてくれた子も、すごく気を使ってくれてた。
きっとここでは働くことの楽しさが学べるんだね。この場所、もっといろんな人に知ってもらいたいね。
- 三 村:
- はい、ありがとうございます!
- 小 原:
- 今日は、色々と興味深いお話を伺うことができました。ありがとうございました。オリジナル曲、期待してますよ!
- 三 村:
- 最後をそこに持って行きますか(笑)!…。こちらこそ、本当にありがとうございました。
CHALLENGED(社会福祉法人 倉敷夢工房)
〒710-0038 倉敷市新田3281-7
TEL:086-430-0390
営業時間 11:00〜15:30
定休日 毎週火曜日